近年増えつつあるフリーアドレス制のオフィス。はじめはコストの削減を目的として導入されましたが、導入したことにより様々な効果が得られたことで、その目的が多様化しています。社員に特定のデスクを設けず、デスクを共有するという日本生まれのこのスタイルにはどのようなメリットがあり、なぜ導入する企業が増加しているのでしょうか。
フリーアドレス制にするメリットとデメリットを紹介いたします。

フリーアドレスとは?

フリーアドレスとは、1987年に大手建設会社でコスト削減を目的として実現されたオフィススタイルであり、1990年代後半からは外資系やIT企業を中心に導入する企業が増加しています。
社員が特定のデスクを使用せず、空いているデスクで作業を行うことにより、スペースや家具、賃料を削減することができるという考えのもと始まったもので、近年ではコストの削減だけでなく、社員の意識や働き方が変化する点やコミュニケーション促進の面でも注目されています。また、「フリーアドレス」とは和製英語であり、アメリカでは「ノンテリトリアルオフィス」「シェアードオフィス」などと呼ばれています。

メリット1:コスト削減

はじめにメリットとして挙げられるのがコストの削減であり、これはフリーアドレス制が導入された当初からの目的です。
例えば、外回りの営業が外出している時間、デスクは空席となり、その間のスペースや賃料は無駄なコストとなってしまいます。しかし、フリーアドレス制の場合は空いているデスクを共有するため、デスクが空く時間がなくなり、余るデスクを削減できるのです。
働き方にもよりますが、社員の人数より少ないデスクでも作業が可能となるため、オフィスの規模を小さくすることで賃料を抑えることができます。

メリット2:コミュニケーションの促進

コストの削減以外にもたらされるメリットとして挙げられているのが、コミュニケーションの活性化です。誰が近くに座るか分からないため、社員同士のコミュニケーションが広がり、日常会話から得られる知識や情報が業務のアイデアにつながる可能性も秘めています。
また、複数人で業務に取り組む際には、メンバー同士近いデスクを使用するなど、オフィスのレイアウトも臨機応変に対応することができるため、時間的なロスもなくなり、効率的に業務を進めることができるのもメリットの一つです。

メリット3:セキュリティ面

空いている時は誰でも使用できるデスクのため、作成した資料をデスク上に置いておくことはできません。そのため、資料がデスク上に放置されることは無くなり、社員ひとりひとりのセキュリティに関する意識が高まります。
また、PCも共有することになるため、大切なデータなどはPCに保存せず、社員それぞれが持つデバイスで保存することとなるため、漏えいなどの問題が起こりにくくなります。情報社会の現代ではセキュリティ管理は会社にとって特に重要な課題となっているため、これは会社にとって大きなメリットです。

デメリット:事実上の固定席

多くのメリットを持つフリーアドレス制ですが、デメリットもあります。特定されたデスクはありませんが、毎日同じデスクを利用することで事実上、特定のデスクとなる場合です。仲の良いメンバーが集まり、新入社員や中途採用の社員など輪の中に入ることができず、コミュニケーションが取れないということも起こりえます。また、デスクが決まっていないことにより、自分がどこに座ればいいのか分からないと混乱し、疎外感を感じてしまう社員が現れることも考えられます。
日本では集団生活を重んじる指向があるため、集団の中に入れないと感じることにより、自分の居場所を無くし、仕事の効率が下がってしまうということもありうるのです。

まとめ

導入する企業が増加しているアドレスフリー制は、コスト削減を実現したい企業側と自分の居場所を持ち、リラックスできる状態で業務に取り組みたいという社員の気持ち、双方が満足できた場合、業務において今までにない成果を生む可能性を秘めたオフィススタイルです。
これからオフィス選びを検討されている方や、会社のコスト削減を考えている方は検討されてみてはいかがでしょうか。