「ストレスチェック」は企業から労働基準監督署に報告義務のある制度です。「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」という内容で、毎年結果を提出しなければなりません。この制度の第1の目的は「職場環境改善」です。従業員のメンタルヘルスは全ての企業にとって重要なテーマのひとつ。精神的に劣悪な環境での労働が続くと、従業員の健康はむしばまれていきます。特に、心の病気を発症した場合、従業員はその病気と一生付き合わなくてはならなくなることも珍しくありません。そうなる前に、企業は従業員をサポートしていく必要があります。ただ、精神的な負担を本人が客観的に把握するのは難しいので、ストレスチェックの実施が義務付けらえているのです。

第2の目的は従業員の「仕事や生活習慣の見直し」を促すことです。真面目な従業員ほど、ストレスがたまっていても頑張りすぎてしまう傾向があります。彼らは、仕事量を減らしたり休息をとってしまったりすると「同僚やお客さんに迷惑ががかる」と考えてしまうからです。こうした従業員は、上司から「休んだほうがいいのではないか」と声をかけても聞かないことが少なくありません。そこで、ストレスチェックによって精神状態を自覚させ、深刻な症状となる前に日々のスケジュールを自主的に見直してもらう流れが大切です。

ストレスチェックはどのように行う?一般的な流れを紹介

厚生労働省の「ストレスチェック制度実施規定」によって、ストレスチェックの流れは示されています。ただ、この規定はあくまで「例」であり、詳細は企業ごとに設置する衛生委員会が決めていきます。そのため、ストレスチェックを実施するにはまず衛生委員会のメンバーを任命しなくてはなりません。ストレスチェックの対象となるのは正規、非正規に関わらない全従業員です。派遣やパート、アルバイトの社員も対象に含まれます。

企業はストレスチェックの実施目的、責任者を従業員向けに公示したうえで、期間を定めて部署ごとに行っていきます。ちなみに、この期間の目安は1週間です。ストレスチェックは厚生労働省が作成した「簡易調査票」によって実施することが一般的。調査票は全57項目の設問に、4段階の選択肢で答えていく仕組みとなっています。ただ、この簡易調査票の内容が絶対ということではなく、業種、業界に合わせて適切な設問を作り直すことも珍しくありません。

各従業員の調査結果を分析し終わった後、企業は各従業員に結果を通知します。その中で、医師の面接指導を受けなければならない従業員がいれば、企業がその機会を提供しなければなりません。なお、ストレスチェックや医師からの面接指導は、就業時間内に実施することになっています。そして、ストレスチェックの結果は衛生管理者を責任者として記録・保管していきます。保存期間は5年が推奨されています。

ストレスチェックから職場環境改善につなげるための注意点

企業がストレスチェックを行うのは義務である一方、労働者は必ずしも受ける必要はありません。ただ、自身の精神状態を知るためには積極的に受けることが望ましいとされています。全従業員にストレスチェックを受けてもらうには、企業側からの丁寧な説明と配慮が不可欠です。掲示板やメールの一斉送信などで実施要項を通達するだけでなく、責任者から丁寧に説明する場を設けましょう。

そのうえで、職場環境改善につなげるために、「社員のメンタル的な不調を未然に防ぐ」ことを目的の一つとすることが重要です。ストレスチェックは、精神疾患を発症してしまった社員を探すことだけが目的ではありません。むしろ、社員がそうなる前にケアすることを主目的とすることが望まれます。少しでも結果で気になる点があった社員には面接を行い、必要であれば医師を引き合わせるなど慎重な対応を心がけましょう。

調査の結果については「集団的分析」も欠かせません。個人の結果だけでなく、部署やチームごとの傾向を分析していく作業です。特定の部署で結果に偏りが生まれるようなら、組織そのものに問題がある可能性も考えるべきです。実施して終わりではなく、結果を真摯に受け止めて部署ごとや自社の問題を探りましょう。厳守しなければならないのは、ストレスチェックの結果によって労働者を解雇や左遷など不当な扱いをしないということです。こうした行為は法律に違反するうえ、そもそも問題の根本的な解決となりません。従業員のメンタル的な不調を招いた環境を真剣に振り返り、労働時間や業務内容を考え直していくことが大切です。

ストレスチェックで企業の問題点も判明する!毎年必ず実施しよう

忙しい企業ほど、知らないうちに従業員に無理をさせているケースは少なくありません。メンタル的な負担が大きくなってしまわないよう、企業の責任において十分なケアをするべきです。厚生労働省の指導に基づくストレスチェックは従業員の精神状態を知るための絶好の機会となります。また、組織の問題点も判明するので職場環境改善にも役立つでしょう。